小劇場勉強会について
「小劇場」は、60年代に登場した新たな演劇空間であり、その空間で演じられる演劇と相まって、建築を学ぶものにとっては、大きな衝撃であった。小劇場という演劇空間では、作品と空間が一体となり役者と観客の熱い関係が構築されており、時代の閉塞感を打ち破ろうとするエネルギーが溢れていた。それは、それまでの劇場が持ち得なかった魅力であり、演劇界だけにとどまらず、社会的な影響力を発揮するものであった。やがて、小劇場が劇場のひとつの形式として認知されるようになってきたものの、従来の劇場に合わせて制定された現行法規には不適格の部分も多く、また経営的にも成立しづらい状況であることなどから、小劇場は常に存続の危機に瀕している。こうした状況の中で、小劇場演劇に深い影響を受け、現在でも劇場や演劇に関わる、あるいは興味を持つ仲間が集まり、その魅力を探ることを目的として勉強会を開催することとした。勉強会は多面的な展開をしており、年表の作成、小劇場の設置状況や運営状況の調査、事例の見学、写真撮影、実測調査などの記録をまとめる作業や講演会、展示会の実施、卒業研究の支援などを行っている。メンバー構成小劇場勉強会のメンバーは、60年代から80年代の小劇場演劇をリアルタイムで経験している者から、経験したことのない若者まで、幅広い年代層で構成されている。それぞれの専門も、建築や舞台芸術に携わる者など、多岐にわたっている。また、現在学生演劇に関わる者や卒業論文で演劇や劇場に関係するテーマに取り組む学生も毎年増え続けている。活動・および成果2007年2月に吉祥寺シアターのシアターカフェで第一回の勉強会を行い、以降基本的に週に一回ミーティングをしながらヒアリング、見学、調査、観劇、等の活動を行ないながら現在に至る。
◇講演会・展示
・2007/02/08大塚聡氏
「新宿梁山泊のテントについて」
・2007/07/18扇田昭彦氏
「60年代の小劇場演劇および小劇場運動とは何だったのか?
・2007/10/02西堂行人氏
「第二世代以降の小劇場演劇の流れ」
・2007/10/18今井俊介氏
「銕仙会能楽研究所と坊ちゃん劇場について」
・2007/12/13坂口大洋氏
「下北沢にみる小劇場の集積効果と創造活動の展開」
・2008/05/02小林徹也氏
「日本劇場建築史概論」
・2008/9/18~23「吉祥寺シアターカフェプロジェクト-CAFE×GALLERY-」
主催・運営
武蔵野大学水谷俊博ゼミ
企画協力:小劇場勉強会
◇見学および現地調査
・吉祥寺シアター見学
・下北沢デ・スズナリ現地調査(写真撮影、測量、図面化)
・三色テント見学、写真撮影
・新国立劇場・小劇場見学
・江戸三座跡地浅草散策、レクチャー(JATTET劇場建築学生ゼミ)
◇文献調査研究
・小劇場データベースの作成および分析
・年表の作成
◇学生参加メンバーによる関連卒業論文、修士論文
「下北沢の小劇場と街路に関する研究
-ロビーを持たない小劇場と街路への溢れ出し分布の考察」
竹内美奈子
静岡文化芸術大学大学院デザイン研究科都市デザイン系、2007年度修士論文
「吉祥寺駅東部地区の歴史的変容に関する研究」
塩沢加奈
武蔵野大学人間関係学部環境学科住環境専攻、2007年度卒業研究
「市街劇に関する研究」
田島誠子
武蔵野大学人間関係学部環境学科住環境専攻、2008年度卒業研究
「映画にみられる空間のあり方に関する研究」
高倉小春
武蔵野大学人間関係学部環境学科住環境専攻、2008年度卒業研究
「舞台(身体による空間構成)研究-オスカー・シュレンマーの空間構成の概念」
奥田翔
東京理科大学理工学部建築学科、2008年度卒業研究
その他
雑誌「建築画報」での対談記事
(作成2008年11月23日)
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