Virtual Architecture | shikano yasushi atelier

吉祥寺シアター併設シアターカフェでの写真展開催概要



小劇場を記録するvol.1三色テント篇


小劇場勉強会は、その研究テーマとして様々なかたちで「小劇場の記録」に取り組んで
きました。その成果発表の第一弾として、メンバーの鹿野安司氏が撮影した、テント劇
場のパノラマ写真の展示会を企画いたしました。鹿野氏は建築設計に携わる傍ら、360
度ムービーで空間を表現した作品をウェブで発表していますが、今回はその360度ムー
ビーの3次元の視点を2次元に展開し、パノラマ写真とした作品を展示いたします。吉
祥寺シアターに併設するシアターカフェに展示することで、小劇場ファンはもとより、
多くの方にご覧頂き、小劇場への興味を喚起することを目指します。また、関連イベン
トとして、3劇団を知るゲストを迎え、トークを開催し、より興味・理解を深めるきっ
かけを提供することも予定しております。



スケジュール

青テント(劇団唐ゼミ☆):12/5〜12/24
紫テント(劇団新宿梁山泊):12/25〜1/13(12/28〜1/3は正月休み)
紅テント(劇団唐組):1/14〜1/30(1/27は休み)
トークセッション
12/16 19:00 室井 尚 氏/横浜国立大学教育人間科学部教授
定員に限りがあるので大変恐縮ですが要予約(先着順)にてお願いいたします

主催

小劇場勉強会
写真展実行委員会委員:伊東正示、大塚聡、鹿野安司、
水谷俊博、星谷好慶、小林徹也、小池浩子

協力

シアターカフェ
劇団唐組 劇団新宿梁山泊 劇団唐ゼミ☆
武蔵野大学水谷俊博研究室(中島悠二)



展示写真について

展示写真は劇団唐ゼミ☆の内観写真「ガラスの少尉」を除いて、昨年の「三色テント 
出で立ち公演」、紅テント(劇団唐組「眠りオルゴール」)、紫テント(劇団新宿梁山泊
「唐版風の又三郎」)、青テント(劇団唐ゼミ☆「鐵仮面」)の三つの劇団が井の頭公園
で連続上演した際に撮影しました。

多岐にわたる小劇場勉強会のテーマのひとつに「記録」があります。今回の展示は空間
記録およびその表現の新しい方法の提案であり、仮設の劇場空間で演劇を行うことの意
味を考えるための材料の提示でもあります。建築関連の文献では劇場建築の記録という
と竣工直後の図面や写真資料がほとんどで、そこで上演された作品が紹介されることは
あまりありません。逆に演劇関連ではその芝居の記録が、劇評や写真、ビデオ映像、戯
曲として記録されていてもそれがどのような空間で行われていたのかという視点で記録
されていることが少ない。劇場(建築と置き換えてもよい)は実際に使われて初めて生き
るし、演劇もその場その時の実体験こそ、面白い。そう考えると、演劇であれ劇場であ
れその体験を完全に再現するのはいくらヴァーチャルリアリアティが進化したとしても
不可能だと思いますが、だからこそ記録の意味や方法をもっと多面的に考えたほうがい
いのではないだろうか、と考えています。

パノラマについて

 一般的にパノラマ写真というと、水平方向に複数枚撮影して横長に貼り合わせたもの
をイメージするだろうか。今回展示しているパノラマ写真はQuickTimeVRと呼ばれる
形式の中間生成物としてのパノラマ写真を元に作られています。QuickTimeVRとは、
写真のように景色を構図として切り取るのでなく、パソコンモニタ上で上下左右全周
360度の景色をクリックドラッグすることで視線を自由に変えて見ることができる形式
のことで、今回の写真は元々モニタ上で3次元的に表現するためのものを2次元に展開
した写真と言うことができます。

「図解あるいはインデックスとしてのパノラマ写真」

 パノラマにもいくつかの種類がありますが、ぼくが扱っているものはいわゆる全周パ
ノラマ、そこに立って上下左右360度全て見回して見える景色全てを撮影したもので
す。構図を切り取る写真では伝えたい意図がダイレクトにそこに込められるが、パノラ
マでは全部見せてしまうので意図が曖昧になりやすい反面、全て見えているということ
が全体の仕組み、あるいは構成を把握するには有効なツールだと考えています。ちょう
ど目次やインデックスのようなものと言えるかもしれません。

まるで絵のような写真

「これは写真なのか?」と聞かれることがあります。従来の写真と違う印象だと感じら
れるとしたらそれはHDR(ハイダイナミックレンジ)合成と呼ばれる手法を取り入れてい
ることによると思われます。HDR合成とは異なる露光設定で撮影された複数の画像、同
じアングルで明るい写真から暗い写真までを撮影して、それらを合成する手法のこと
で、眩しくて、あるいは暗くてよく見えない部分のディテールをよく見えるようにする
ために用いています。


撮影者プロフィール

鹿野安司 (しかのやすし) 建築家

1960年群馬県生まれ。
1987年早稲田大学理工学研究科修士課程修了
1987年〜1990年株式会社石本建築事務所
1990年〜1996年株式会社白川直行アトリエ
1996年鹿野安司アトリエ設立、現在に至る
関わった主なプロジェクト
鎌倉芸術館(1990)
サンアクアTOTO本社工場(1994)
茅野市民館(2005)
桜美林学園新荊冠堂(2007)
など