Virtual Architecture | shikano yasushi atelier

川崎市アートセンターをパノラマで見る


 先日、川崎市アートセンターの内覧会に行って参りました。
 場所は小田急線新百合ケ丘駅。新百合ケ丘には以前に紹介した昭和音大があり、ほかに映画監督、今村昌平が創設した日本映画学校があります。音楽と映画、そして新しいアートセンターには小劇場と映画館があり、相互補完しながら地域の芸術環境の発展に寄与しようというコンセプトのようです。

川崎市アートセンター
日本映画学校
昭和音大

昭和音大のパノラマ

 小劇場は固定段床客席のエンドステージ形式で客席数は約200席。主舞台、前舞台とも仮設床(奈落はない)なので必要に応じて舞台範囲を変化させることができます。段床勾配はかなり急勾配で、これは段床下の空間を楽屋トイレなどに利用したいということと、前舞台を最大拡張したときの視線を考えたことによると思われます。舞台が見やすくなる反面、固定床なので平土間にすることはできず、アートとは言いながら実験的空間の可能性はあまりなく、完成したコンテンツを上演することが主な利用になるでしょう。段床勾配を急にしたことで1階の階高を大きくすることになり、結果として舞台後方の搬入スペースがスロープ状になったり、メインエントランスへの正面階段の勾配がけっこうきつくなったり、すこし弊害も出ているように感じられます。映画館と小劇場は共通のロビーを介して接していますが、このロビーもスペースとしてはやや小さめで、小劇場の開演時はすこし混雑するかもしれません。若干の高低差のあるそれほど余裕があるとも思えない敷地に対して設計の与件がやや厳しかったのではないでしょうか。
 一方で、劇場建築は住居系の用途地域に建設することは出来ないのですが、この場所はちょうど住居系と商業の境界になるのか、すぐ近くには集合住宅の建物が見えます。この地域で暮らす人にとっては映画、音楽、演劇を地元で楽しむことができることになり、非常に有意義な施設であることは確かでしょう。

川崎市アートセンターをパノラマで見る

建物正面
ロビー
小劇場客席
小劇場舞台


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