Virtual Architecture | shikano yasushi atelier

劇団唐組・紅テントをパノラマ写真で見る



 新宿梁山泊・紫テント、唐ゼミ・青テント、と取り上げてきましたが、三色テントの大トリは唐組・紅テントでございます。

 三種類のテント、三つの劇団で、三つの唐十郎作品を続けて見ると、同じ唐作品をやりながらも、そのテントの構造、大きさの違い、役者、演出の考え方の違いで、ずいぶんと印象が違うことに気づきます。建築的なことについては、寸法などを確認していつかデータ化するつもりですが、まずは気づくポイントについてメモ書きしときます。

透けるテント
紅テントのテント膜は透けるので、昼間で照明がなくても、ぼんやりと赤く明るい。この紅テントの昼間の赤く明るい空間はふつう見ることはないので、こうして明るい時間帯から日が落ちるまでの時間を見ることができたのは貴重な体験となりました。この透けた明るさは演出上は大きな障害になりうるわけですが、昼間に公演することがないから問題なしなのか、それとも少しくらい透けていてもかまわない、あるいは少し透けた方がいいと考えたのか、気になるところです。一方で、紫テントや青テントは透けないので昼間でもかなり暗い。外の状況に関係なく暗転したり、照明効果で外の影響を受けたくないと考えるのが常識ですから透けないということが当たり前なことなのですが、透けるテント膜で外界と微妙な関係をつくりうる紅テントの方が刺激的(あるいは挑発的)な感じを受けます。余談になりますが、テント設営期間中はテント番という留守番がそこで寝泊まりするのですが、今回の紅テントの写真にはそのテント番の布団や一升瓶やゴミ袋などが写っています。交代とはいえ、昼間も赤く明るいテントで生活することが、役者に何らかの影響があるに違いないと思ってしまいますがどうでしょうか。

天井が低い舞台

劇場設計においては、舞台はなるべく広く高く、というのが常識的な考え方ですが、紅テントの舞台天井高さはかなり低い。不覚にも計ってこなかったのですが、3m前後でしょうか。ちなみに間口は4間、奥行きは1間半程度。天井の低さは唐十郎の考えによるとのことで、聞いた話ですが、安藤忠雄が設計した下町唐座の仮設は天井が高すぎて内部にさらにテントで天井を作ったということも聞きました。吊り構造で天井を高くしにくいのが欠点だとばかり思っていましたが、これは積極的に低くしているのだということを聞いて、ちょっとびっくりしましたが、天井の低い空間で役者にも観客にも緊張感を持たせるという考え方なのかもしれません。

吊り構造


 外観を見れば、青テント、紫テントと、紅テントとの建築構造的な違いは一目瞭然で、前者二つは鉄管による柱梁構造で、紅テントは吊り構造だということです。6本の柱に上から赤いテント膜をかぶせて周囲に引っ張っているたたずまいは、建物というよりは、日常的な風景の中に突如現れた何か異形の植物か動物のようにも見えます。また、印象的な外観に目がいきがちですが、前述のように天井が低く窮屈な感じを受けるという欠点(長所)と引き換えに、観客数に応じて平面サイズを微調整できるという、実用的なメリットもあります。末広がりのテントの裾は広げることができるので、周囲に広がっていっても違和感がありません。実際、ぎゅうぎゅうづめで見たこともありますが頭すれすれにテント膜があった覚えもあります。一方で、梁山泊のような切妻型の柱梁構造だと前(後)方へ拡張することは出来てもサイドへ拡張することはしにくいかもしれません。青テントは正方形平面で屋根が寄棟なので梁山泊よりは周囲への拡張性があるかもしれませんが、空間に中心があることや、今後、観客数が増えたときにどう対応するのか気になります。

 唐組も新宿梁山泊も長いキャリアに裏付けされた強さや洗練性(特に梁山泊には)を感じるのですが、今回初めて見た、劇団唐ゼミ☆には、エンディングの演出に見られるような知性や戦略性と同時に野生(あるいは野生を目指す知性とでも言いましょうか)を感じました。若い彼らが今後どうなっていくのか期待して注目していこうと思います。

唐組・紅テントをQuickTimeVRで見る

外観(昼景)
テント内花道
テント内上手付近
舞台上
外観(夜景)

劇団唐ゼミ☆青テントをQuickTimeVRで見る
劇団新宿梁山泊紫テントをQuickTimeVRで見る

劇団唐ゼミ☆「鐵仮面」は今週19,20,21日、京都:四条河原町 元立誠小学校 青テントにて公演、劇団唐組「眠りオルゴール」は20,21日井の頭公園ジブリ美術館の紅テントにて公演、さらに27,27,28日は場所を変えて雑司ヶ谷鬼子母神にて、公演があります。興味のある方は是非ご覧ください。



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