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劇団桟敷童子「泥花」中野光座



 80年代に芝居をたくさん見た自分にとって、廃館となった映画館での芝居というと劇団第七病棟が浅草常磐座で公演した「ビニールの城」をどうしても思い出してしまう。非常に強烈な体験で、振り返ってみるとそれまでべらぼうな数の芝居を見ていたのにその後他の芝居が色あせて見えるようになり結果としてだんだん芝居から遠ざかっていったきっかけのひとつになっているかもしれない芝居だ。ちなみに80年代の後半、そのようなきっかけ、あるいは当時の演劇のピークだと思う芝居を挙げると、85年「ビニールの城」、同年、大谷石採掘現場で転形劇場の「地の駅」、86年に遊民社の代々木公演、87年に銀座セゾン劇場開館でピーターブルックの「カルメン」、88年に状況劇場が解散して唐組旗揚げ等々が挙げられる。

 20年以上も前の芝居を意識しているのかいないのか、第七病棟と桟敷童子には場所を厳選しているという点が少し似ている。スズナリ、ベニサン、最近では吉祥寺シアターでも公演しているが、廃館となった映画館、倉庫、ビルの屋上、専門学校の教室などで公演している。吉祥寺シアターは演劇のための専用劇場だが、これは専用であることがまれな施設で、東京のほとんどの小劇場はもともと劇場としてつくられたものではなくオルタナティブな空間だけど、それでもあらかじめ演劇公演のために用意されている、たとえばスズナリのような場所でなく、ふだんは別の用途に使われてる場所を選んでいる点を考えると、公演場所をどこにするかを重要視しているのはたしかだと思われる。ただ、場所の特性を生かした演劇、あるいはその戯曲のための場所はどこかと考えるのではなく、どこへ行ってもその過剰とも言える舞台美術で自分たちの空間に変えてしまうところは、むしろテント芝居に近いかもしれない。
 さて、その芝居についても書いておこう。撮影させてもらったから書くわけではありませんが、役者の演技力、本の面白さ、ケレン味のある演出、どれをとっても安心して人に勧められるほどレベルが高いです。逆にその優等生とも言えるところがぼくが感じる不満でもあるのですが。よく考えよくトレーニングし芝居を愛しているであろうことは想像できるので、これ以上何を望めばいいのかわかりませんが、それほど期待値が高い劇団であるということは言えます。

劇団桟敷童子「泥花」中野光座をQuickTimeVRで見る

エントランス階段 (3.5Mb)
ロビー、受付辺り (3.7Mb)
ロビー、ホール入口辺り (3.4Mb)
ホール (3.9Mb)
裏方階段 (3.4Mb)

劇団桟敷童子公式サイト


 撮影は開場前2時間ほどの時間を使わせてもらった。最初のミーティングが終わると、いきなり舞台で電動のこぎりの音や金槌で物を叩く音が大きく響き、まるで工事現場のような雰囲気になったのには少しびっくりした。ホールの外では衣装のアイロンがけをしたり、様々な準備作業で役者たちが活発に動き回っていてすごくエキサイティングな時間でしたが、そのため撮影は、シャッターが長いことやAEBでHDR合成していることのために人物描写がやや甘いものなっていますがご了承ください。また、時間が限られている中で多くの場所を撮影したかったので、余裕があるときには撮影する三脚消去用の真下撮影をエントランス階段を除いて省略しました。エントランス階段だけはこの日最初だったので撮影したのですが、時間がかかりすぎました。三脚周囲の情報を元にコピペして消すことも可能なのですが、撮影者の痕跡を残すのも悪くないと思えたのでほぼそのまま描写しています。

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