Virtual Architecture | shikano yasushi atelier

QuickTimeVRにおける底面撮影について〜Manfrotto303SPHのバリエーション



 最近はパノラマ雲台もNodalNinjaのような安価なものが発売されていて、高価で重いManfrotto303SPHを選択する人はあまりいないかもしれません。ですが、使ってみてこれで良かったと思うこともあるので、そうしたことについて一応書いておこうと思います。
 量販店で入手できる、丈夫である、重いので安定する、等々長所はいくつか挙げられますが、パーツの組合せを変えることができるということが、Manfrottoの他の製品に対してのアドバンテージなのではないかと思っています。

 QuickTimeVRで、真下を見たときに三脚が消されているのは、三脚からカメラを持ち出して(センターポールからオフセットして)撮影しているからですが、手持ちでシャッターを切れるのであれば、以前は底面撮影は手持ちでしていたし、そうしている人も多いと思います。昼間の屋外、人物や車等、動くものが被写体に入っている場合はいずれにせよ手持ちで切れるシャッタースピードになるので、暗くて三脚が必要な状況でない限り手持ち撮影でも十分でした。ところが今ではHDR合成のためのオートブラケット撮影がデフォルトになってしまったので三脚消去のための底面撮影を手持ちでするわけにはいかず、ずいぶん試行錯誤しています。

 冒頭の写真は、最近使用しているセッティングです。水平プレートと垂直部の取付け方向を逆にしてスライディングプレートアダプタを介して両方向にセットできるようにしています。レベラーに取付けている最初の水平プレートが写真ではロングプレート(アダプタをつけて断面積を大きく安定性を増し、かつセッティング用のガイドにしている)を付けていますが、これはショートタイプに変えてもいけるので、ちょっと思案中。持ち出し距離を稼げるメリットと安定性(ミラーショックによるブレ)と比べてどうしようかと。あと底面撮影時に2台目の300N(回転台)を回転させますが、戻したときにクリックストップとはいえ目盛りの確認をしないとわずかですがズレる可能性があります。使用パーツが増えるほど取付け誤差が生じる可能性も増すので、ちょっと迷うところなのですが、このセットが便利なのは、いったんカメラを据え付けたら底面撮影でもカメラをはずす必要がないということです。

 このセットから300Nをはずしたものが次の写真。底面撮影のときはいったん外して取付け直します。303SPHのセットでは最初からロングプレートが付属しているので買い足さなくてもこのセッティングはできます。(カメラ底面のネジ穴がレンズ中心線と合っている必要がありますが)



 ちなみにManfrotto438というレベラをかませていますが、これはパノラマ用には必ずしも必要ではなく広角レンズなどに付け替えてスチルを撮る時、雲台代わりに使用します。Manfrotto338という精密設定が可能なレベリングベースもありますが手っ取り早くセッティングできる438を使用しています。このようなレベラーをかますならいっそのこと3Way雲台やボール雲台を使えばいいじゃないかという考えもあるかもしれません。それが次の写真です。




 このセットはブレが大きく、うっかり緩めようものならいきなりお辞儀してしまう危険性もあるので実戦ではあまり使いませんでした。3Way雲台ならブレを抑えられるかもしれませんがハンドルが撮影時に邪魔になります。あとセンターポールで高さ調整する必要もあります。

 底面撮影についてはこれら以外にも、INDUROのAXやGIZZOのexplorerなどセンターポールを傾けられる三脚や、ぼくが使用しているManfrotto055pro、最近発売された190Xのようにセンターポールを水平にできる(とくに190Xは簡単に水平に出来ます)三脚を使うという方法もありますが、これらの方法は高さ調整しにくいという難点があります。おまけに055proや190Xは水平限定だから高さ調整は出来ません。ただし平坦な場所での撮影で、ステッチ後に底面をふさぐという方法なら高さ調整は必ずしも必要ではなく、190Xなどはその点を割り切って開発されたのではないかと思います。

 まるで苦労など何事もなかったかのように、ズレもなく三脚を消去できるのがプロのスキルだと思いますが、実際、三脚消去のための撮影と後処理は手間がかかります。三脚が写っていようがいまいが本質とは関係ないときもあるし、逆にどうしても消したい、つまり何が何でも下を見せたいということもあります。あるいは、スポットライトがいくつも当たっている舞台上で三脚や自分からからのびる影も複雑で厳密には影のない状態を撮影してステッチすることが非常にむずかしい状況、っていうかほとんど無理な状況などもあります。そういうときはヘタにやるよりはあきらめて三脚を写したまま公開したりしていますが、いずれしても、やろうと思ったときに出来る準備だけはしておきたいとは思います。


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