Virtual Architecture | shikano yasushi atelier

パノラマ雲台の精度と高解像度パノラマ

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以前はマルチレゾリューションは高解像度化の手段と考えていたのですが、やってみると読み込みが早いというメリットに気がついて、最近はマルチレゾがデフォになりつつあります。また読み込みが早いとVRツアーもストレスが軽減して、こちらも少しハードルが下がった気がします。パノラマは一枚で全部で見せきるということに意味があると思うし、同じような景色をたくさん見せるツアーはどうかと思うのですが、カットが増えることに注意しながら可能性を探りたいと考え始めています。参考までに11月に横浜で劇団唐ゼミ★が主催した「大唐十郎展」の様子をパノラマVRツアーでまとめたものがあるので御覧ください。

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マルチレゾにして高画素化し、拡大率もわずかですがアップすると、以前は魚眼レンズを使用している限り高画素にしても効果は小さいと判断していたことも、その微妙な差が意外と無視できないという事に気がつきました。最近、撮影している某博物館では、タイトルや説明文の判読出来るかどうか、近寄るのは簡単ですが、機材の解像する能力範囲と空間全体での位置とのバランスを考えて現場で位置決めしています。また、機材の解像能力をフルに使えるようになると、センサーと(魚眼)レンズの性能が向上することでさらに画質の向上が期待できます。非魚眼レンズの場合、撮影枚数が増えてかつピントコントロールがシビアになることを考えると、この先もテストは別としても長いレンズで高画素化を図ることはたぶんないでしょう。

わずかとはいえ高画素にして拡大率を上げると、当然今度はステッチズレなどのアラが見えてくるようになります。これまでもいちおう気を使っていたつもりですが、以前なら見過ごしていたものも無視できないようになります。多少いい加減なノーダルポイントの設定もソフトまかせでよかったのですが、この点はかなりシビアになりました。

そんなときに、国産メーカーがパノラマ雲台を開発するというニュース。記事では、汎用性、モデュール化、他社製品との互換性とあるので、アルカ規格でシステム化するのではないかと予想できるのですが、もしそうだとしたらやや不安、不満を感じます。

たとえば、自分の使用する manfrotto 303sph はアルカより幅広のプレートによるシステムですが、ネジとプレートスリットのクリアランスが大きい、プレートとプレートをつかむアダプタ(クランプ)にクリアランスがあるのにネジ穴はアダプタの中心にあるので締めたときにわずかにオフセットになる、など細かい話ですが精度の点で不満があります。これらの点が結果にどの程度影響があるのか定かでないのですが、組み合わせる部材の数が増えると誤差も大きくなる可能性がそれだけ大きくなり、外形も大きくあるいは複雑になることが、プレートを組み合わせるシステムについての不満です。汎用性や組み方のバリエーションは確かに長所かもしれませんが、自分としてはセッティングやステッチではこれ以上気を使いたくないので、あらためてこのような機材を選択することはないでしょう。以前に自分のプログでバリエーションはメリットと書いたこともありますが、(そのときも半分は自虐ネタのつもりでしたが)、最近のシビアになっている状況を考えると、もはやメリットとは言えない気がしています。

ちなみにパノラマ雲台に望むことは、剛性感、安定感、可搬性などのほか、一度セットしたら常に同じ状態で撮影できる、ばらしても容易に同じ状態で再セットできる、ミラーショックの影響を受けにくいよう外形は小さい(低い)ほうが良い、構成する部材の断面は大きい方が安定感があって良い、回転台は小さく側面に突起物がないか、突起物があっても視界に入らないよう固定側でなく回転側についている、水平材が回転中心からオフセットされている、など nadir に対する配慮がされている、などの点が挙げられます。

さて、そのような製品には、どんなものがあるか。使ったことがないので人にすすめることはできませんが、360precision Adjuste MK2 は写真を見るかぎり上述の条件に近く、よく考えられた製品に見えます。カメラ取付部がゴムではなく金属面になっていて、ピンとの2点決めである部分など、なるほどという感じです。(ぼくのカメラはネジ穴が底面の中心でなく後方によっているため、ネジを締めたときにゴム部の沈み込みで前方がわずかに上に上がります) また最近ではフレームにカーボンを使って軽量化したサンプル写真も公開していて製品開発に積極的です。その他気になるメーカとしては、Nodal NinjaAgnos 、アルカタイプならRRSでしょうか。


基本的にマルチロウタイプについて記述しましたが、
Zeneath の撮影不要ならレンズクランプ式がいいでしょうし、機材や撮影スタイルによって求める機能が違うので、そういう意味でも汎用性ということに疑問や難しさを感じます。多少重くてかさばっても時間をかけて落ち着いて撮影するケースもあれば、気が向いたらスナップのように撮影したいというケースもあるでしょう。ぼくのスタイルではHDR合成するので連写時の振動は極力抑えたい、カメラ+雲台を外して別のカメラを三脚にのせて通常の写真も撮影したいので、のせかえを簡単にしたい、といった要望もあります。最近のミラーレス、フォーサーズのような小型のカメラに対応する可能性もあるでしょう。手動と同じ部材で電動化出来るシステムもあるかもしれません。そうした千差万別のスタイルに応えるシステムは果たして可能なのでしょうか。不安と期待を持って発売を待ちたいと思います。いずれにせよ国産メーカーさんには、あくまでも個人的な希望ですが、市場を日本だけではなく世界を見て欲しいし、後発の強みを生かして360precisionのようなパノラマのことをよく理解していると思わせる製品と比較しても、負けない設計をして欲しいと思います。

ちなみに、ぼくはステッチソフトとして、
PTGuiではなくStitcherを使用しているのでステッチ精度と撮影精度についての関係は、PTGuiユーザーと差があるかもしれませんがそんな終わっているソフト使うなよっていうツッコミはなしでおねがいしますww (まぁ笑い事でもないんですがね) それと、わかっている欠点で改良可能なものは改良しています。

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