劇場のサイドバルコニー

Theatreサイトライン,サイドバルコニー

劇場のサイドバルコニーについて、ドイツのゼンパーオーパー、愛知芸術劇場、新国立劇場のGSVをもとに考えてみる。


最初のGSV、ドイツのゼンパーオーパーは典型的な馬蹄形平面のサイドバルコニーで、日本では2000席を超えるような大規模なオペラハウスで採用されてきた形式であるが、舞台に近い場所では同じ側の舞台が見にくいという課題がある。

次のGSVは愛知芸術劇場で、これはゼンパーオーパーをもとにしつつ、サイドバルコニーを分割して舞台に向け、後方へ行くに従って高さも上げるように計画したもので、スレッジ形式とも言われている。

次のGSVは新国立劇場である。客席段床をサイドにおいて舞台に対して張り出している形式で、正式名称はあるのかもしれないが形式名は聞いたことがない。上述のスレッジではどちらかというと客席を向いている横並びの席が、この形式ではバルコニー中央部と同様の段床が舞台に向かっている点がスレッジと異なり、意図が違うのでスレッジの一種というよりは段床のサイドでの張り出しと考える方がいいかもしれない。舞台に向かっているので見やすいと言えるが、このGSVでもプロセニアムの右側上端が見切れているように、このバルコニー下の席で同じ側のプロセニアムの上端が見切れる恐れがあるので注意が必要である。ちなみに実際に椅子に座ったときにどのように見えるかは未確認である。

上述の3つの劇場は全てオペラハウスなので、音響反射板がなく、通常、多目的ホールで課題となる音響反射板とホール側壁との一体感、フロントサイドライトとサイドバルコニーの調整、という点はこのようなホールでは関係がないことに注意されたい。