アダプタブルステージとは

Theatreアダプタブルステージ

アダプタブルステージ1とは何らかの設備で舞台と客席の位置関係を可変できるステージ形式である。従って移動観覧席で平土間と段床を転換するタイプはここでは取り上げていない。

設備は主に、跳ね上げ床、昇降床(迫り)、エアキャスタに分類される

跳ね上げ床

跳ね上げ床とは、床下に椅子が収納されていてその床を跳ね上げることで客席に転換する設備。

芦屋市市民会館ルナホール
湘南台文化センター・市民シアター
吹田市文化会館 中ホール

上記二つの事例は舞台周りを跳ね上げ床にしてアリーナを形成できるようにしている

昇降床(迫り)

昇降床は床を平面的に分割して床レベルを変えて舞台や客席段床を形成する設備

京都府立府民ホール・アルティ
青山円形劇場(電動昇降床)
スペース・ゼロ

椅子について、アルティは昇降床自体に椅子を内蔵。青山円形では専用の椅子を取り外し可能にしている。スペースゼロではスタッキングを使用している
上記3つのホールは舞台と客席の平面的な関係を可変するタイプだが、以下2つのホールは客席の勾配を可変するタイプである。勾配を可変することで花道のある歌舞伎劇場的な空間とダンスなどを鑑賞するのに適した勾配とに対応できる

KAAT神奈川芸術劇場
世田谷パブリックシアター

エアキャスター

エアキャスタは平面的に分割された床を空気を下面から吹くことで床から浮上させて人力で移動するための設備である。跳ね上げ床、昇降床は位置が固定されるのでそのバリエーションが限定的だが、エアキャスタの場合は移動も配置も自由であることが大きな特徴である。

いわき芸術文化交流館中劇場
茅野市民館マルチホール
氷見市芸術文化館

以上、設備の種類で分類したが、跳ね上げ床・昇降床とエアキャスタでは大きな違いがある。その違いとは、前者は舞台の基本的な位置は固定で、昇降床で舞台を張り出したり舞台の一部を客席にする形式であるのに対して、エアキャスタは舞台の配置が自由なので天井の照明や音響の舞台設備がその自由な配置に対して対応できるようになっていないといけないという点である。エアキャスタによる可変システムはエンドステージやプロセニアム形式の舞台を出発点として舞台周りを可変するのではなく、ユニバーサルスペースを可変してさまざまなバリエーションを生み出すということが大きな特徴であると言える。そういう意味では茅野市民館マルチホールはプロセニアム2があるため舞台と客席の空間的な一体感はやや薄いのに対して、氷見市芸術文化館はプロセニアムがないシューボックスのワンルームというオープンステージであり、舞台上のスノコと客席上部のシーリングギャラリーも連続していることで舞台と客席は一体的な空間となっている点が茅野と氷見の大きな違いである。

ちなみに、エアキャスタではなく昇降床によるものだが、ユニバーサルでアダプタブルな劇場としての先例としてシャウビューネ劇場を取り上げておく。

シャウビューネ劇場(ドイツ・ベルリン)

Singtel Waterfront Theatre

上の動画はシンガポールの比較的新しい劇場で舞台形式を可変できるタイプだが、どのように転換しているのかは資料が見当たらなかったので不明であるが、一応取り上げておく

  1. アダプタブルステージの他には、プロセニアムステージ、オープンステージがあり、オープンステージのバリエーションとしてアリーナステージ、エンドステージなどがある。
    ↩︎
  2. 茅野のプロセニアムは額縁として舞台と客席を仕切りつつも、舞台と客席をつないで、一体感、連続感を意識して、客席の腰壁から連続する車のスポイラーのような形のものが宙に浮いているようなデザインとしている。横も上部も隙間が空いていてそれを塞ぐ可動プロセニアムが必要であり、そもそも不要ではないかという話もあったが、音響の反射面としては客席中央に音を反射させる極めて有効なものとなっていることから採用されたデザインである。 ↩︎



引き続き加筆修正予定