開かれた公共ホール・開放型ホールとは

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ここでは建築的な意味でホールの一部を大きく開くことができるホールを取り上げる。上の写真は客席側面を開いた氷見市芸術文化館である。以下、ホールのどの部分で開いているかで分類して事例を取り上げる。

舞台オープン

舞台後方を開いた例は古くからあり、川崎市民交流プラザは1979年開館である。後方を開く目的としては、テント芝居ではよくみられるが、芝居のエンディングで屋台崩しと呼ばれる舞台背景をパラして外部(現実)を見せるという演出が考えられる。他には後方からも見せることによる一種のアリーナ形式であるとか、スペースの一体化による祭事、スペースの一体化、拡張による広場化などが考えられる。反対側が熊谷のように外部のこともあれば川崎のように半屋外アトリウムのようなケースもあり後方の空間性によってバリエーションがある。
舞台後方は楽屋や大道具備品庫などを配置したいスペースでもあり、利便性を損なうことなく計画することが重要である。
ちなみに、舞台の側面を開いている事例は少ないが、舞台の下手は綱元があり、上手は大道具備品が収納されていることが多いことから、かつては側面を開くことは難しいことであったが、綱元は電動化が主流となったので、側面を開く可能性は以前より大きくなっていると言える。

舞台後方オープン


川崎市民プラザ
川口総合文化センター
熊谷文化創造館
福崎町エルデホール
西神中央ホール


舞台側面オープン


鹿島市民文化ホール
阿久根市民交流センター

ちなみに上記二つのホールは客席の側面も開いており、舞台、客席合わせて側面を開いている数少ない事例である。

客席後方オープン


客席後方を開いた例としては、茅野市民館が先例としてあるが、茅野がエアキャスタによるアダプタブルステージであるのに対して、ここで取り上げたホールは全て移動観覧席による段床と平土間の転換タイプである。平土間化して開くことで展示やパーティなどの利用イメージが想定されていて、舞台芸術にあまり興味がない人もそのようなイベントでアクセスする機会が増えるのを意図していると考えられる。

スペース・ゼロ
由利本荘市文化交流館
八丈町多目的ホール
釜石市民ホール
滝沢市交流拠点複合施設

側面オープン

移動観覧席は後方に収納するのが主流で上述の例は全て舞台側に収納することで客席後方を開くことができているが、この例では移動観覧席は後方に収納しつつ客席側面を開いた例である。


上越市市民交流施設


ホールを開くことの意味とは何か。大きくは可視化、隣接空間との一体化、この二つの意味があると考えられる。可視化とは、舞台芸術に興味がない人にとって中で何が行われているかわからない、という状況に対して、可視化することでアクセスする機会が生まれることが期待されていると言えるであろう。隣接空間との一体化とは、スペースが拡張されることでそのイベント規模が拡大できて、例えば展示であればホールとロビーを一体化した展示空間とすることができることで、アクセス性も向上される。
可視化のために壁の一部をガラスにする、開閉するための建具を入れると、その部分の遮音性能は低下するので、ガラスにしろ建具にしろ遮音上はさまざまな工夫が必要であり設計上は容易なことではないが、ホールを開いてアクセスしやすくして施設に親しむ機会を増やし利用率を上げることは公共ホールにとって重要なことだと言えるのではないだろうか。



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