非対称の客席空間

写真は鹿島市民文化ホール
客席は通常は左右対称で計画されることが多い。舞台から客席を見たときに空間が非対称だと演者がどこを見ていいかわからない、鑑賞条件が変わると同じ料金にしにくい、均質で場所によってなるべく差が生じない様にしたい、というのが非対称の空間が敬遠される主な理由だと考えられるが、例えば能舞台や歌舞伎劇場は非対称であることが大きな特徴であり、特に花道は演出上、パノラミックな視線の動きを生み、それが劇的でダイナミックな効果を生んでいる。また、海外では非対称の客席配置をした劇場が古くからあり、これらがどうしてこのような空間になっているのかを考えることが重要ではないだろうか。
ガスリー劇場(ミネアポリス、ミネソタ、アメリカ)
台北パフォーミングセンター(台湾)
ザンクト・ガレン劇場(スイス)
カールスルーエ・バーデン州立劇場(ドイツ)
エッセン・アアルト劇場(ドイツ)
上はドイツのTheatre Bonn Opera House
上記はアアルト劇場をのぞいて全て片側のもみあげ席である。台北とボンが下手側、ガスリー、ザンクトガレン、カールスルーエは上手側のもみあげ席になっている。日本の場合は花道を意識すると上手になりそうなものだが、海外だとそのような根拠がなく下手のもみあげ席もあるということだろうか。ちなみにアアルト劇場は以前紹介したバービカンのように上階バルコニーがオーハングしているのが興味深い。
また、これらは、演劇やオペラのための劇場であるが、コンサートホールでは以前に当サイトで紹介しているように、非対称であるものは多い。そもそもオーケストラが非対称であること、音響は均質に音を聴かせるというよりは、座る場所によって音が変わること、プロセニアムのように一方向からではなく演奏者の近くで取り巻くように客席を配置できること、近くに壁、庇、などの反射面がある方が初期反射音を得やすいこと、ワインヤード的なテラス壁と呼ばれる段差壁が好まれること、などなど様々な理由で適度な空間のぱらつきが好まれることから非対称になりやすいのではないかと考えられる。