フィルハーモニー・ド・パリ
建築家のジャン・ヌーベルが設計したパリのコンサートホールのGSVがあったので紹介します。
先日紹介したエルプと違って上階でもバルコニーがかぶっていないので、吹抜空間の中にいる雰囲気があって音がよく聞こえてきそうな気がします。撮影高さが椅子に座った時の高さよりも高いので、実際に舞台がどこまで見えているかの詳細は確認できませんが、半分以上は見えているのではないでしょうか。もともと、舞台のサイドの手前側はある程度見えないのは仕方がないので、これが設計上の許容範囲ということだと思います。
断面図を見ると、大きな吹抜空間の中に上階バルコニーが浮いているような構造で、残念ながらその雰囲気を確認できる映像はなさそうですが、舞台正面後方からのアングルがあったのでこちらも貼っておきます。音響設計的には気積を大きくして残響を長く豊かにして、浮雲状の天井反射面で初期反射音を確保することで明瞭性を高めるという、教科書通りの計画です。後述するデンマークのホールと違いバルコニーにしているのはおそらく客席数がこちらの方が多いからと考えられます。
ここはクラシックのコンサートホールですが、電気音響による公演もするようで、例として紹介します。映像では詳細が見えませんが、舞台後方の客席は断面図を見ると移動観覧席のようになっているので客席は収納して後方を拡張し、舞台照明などのスペースを確保したのではないでしょうか。
舞台の床面は明るい色ですが、舞台を取り巻く床と椅子は全て黒いので、舞台周りはこのように多目的に使うイメージがあるのかもしれません。
最後にデンマーク、コペンハーゲンにある同じジャンヌーベルによるDRコンサートホールのGSV。こちらはパリと違って全体が木調でベルリン的なワインヤード・アリーナの空間。同じ設計者、同じコンサートホールですが、計画の考え方が微妙に異なるのが興味深い。