エルプフィルハーモニー・ハンブルク
ヘルツォーク・ド・ムーロンが設計したエルプフィルのGSVがあったので紹介します。
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最近、ホールについて「見える見えない」というのが時々話題になります。演劇と音楽など演目の違い、お国柄の違いなど、考え方には多少の違いや巾があると思いますし、舞台に向かって正面ではなくサイドの席はとかくこのような状況になりやすく、ある程度見えないのは仕方がないのですが、このように半分くらいしか見えなくてしかも見えてる部分に手すりがある状況を実際に目の当たりにすると、かなり驚かされます。運営上はチケット代も割安にしておかないと批判もされるでしょう。以前、建築雑誌で断面図を確認していたので、このようなイメージは持っていましたが、壁と天井がシームレスに連続していて、床も壁の色調に近い明るい色を使っていることから、閉塞感とか疎外感はそれぼどではないかもしれません。実際にその場に行ったことがないのでわかりませんが。また、この位置はサイドバルコニーの2列目なので、1列目であればかなり見え方が変わります。最近の設計の考え方ではサイドバルコニの2列目はなるべく計画しないのが無難だとも言われています。
1列目と2列目の段差は5段あるので、けあげ寸法が不明ですが仮に180として900段差ということになります。かなり急ですが、先日のケルンのように縦通路側には手すりがありません。手すりをつけると、縦通路の左側の席は舞台方向を見た時にその手すりが視界に入って邪魔になるからだと思います。一方で列の前には手すりがあり、縦通路の先では落下防止のために高めの手すりが設置されていて、この考え方は日本でも同様です。
椅子のデザインが肘掛けと背板が一体のデザインで一脚ずつになっていて、肘掛けと脚が一脚ごとで布ぐるみになっていますが、これは日本ではあまり見たことがありません。日本では肘掛けは隣と共用、脚も一脚ごとではなく数席ごとにあるのが普通で、また背板の外側は木製、座面と背は布製というのが日本での一般的なものです。
椅子の下には空調の吹き出し口らしきものが見えますが、これは人に近いところで吹くことと、壁や天井に吹き出し口をデザインしたくないというのが理由だと思われます。
空間形式としては多層バルコニー形式と言われるもので、平面的には小さく、高さを高くして大勢の人を収容する形式で、日本では上野の東京文化会館が有名です。一方でベルリンフィルのような平面的に広くバルコニーの重なりがなく段々畑のようになっているものはワインヤード形式と言われています。音響的にどちらが良いとか悪いとかはないと思いますが、音の質は違うものになるのではないかと思います。音響コンサルは永田音響が担当していて、このホールについてもサイトで紹介されています。多層バルコニー形式ですが客席を分節化して人に近い分節部分を反射面にすることで良い響きを得ようという考え方のようで、多層バルコニとワインヤードのハイブリッド的な考え方になるのでしょうか。詳細は永田音響の記事をご確認ください。