Virtual Architecture | shikano yasushi atelier

Stitcher Unlimited 5.6のHDR対応について



 パノラマステッチソフトのStitcherとPTGuiがバージョンアップしてHDR対応しました。PTGuiは使っていないのですが、Stitcherは早速アップグレードして使ってみました。

 最初、HDRに対応する前にRAW対応が先なんじゃないのか、そう思ったりしたのですが、RAWをRAWのままステッチしてステッチされたRAWファイルが出来ればいいけど、そもそもそれはRAWではないわけだし、逆に内部でRAW調整するのはお門違いという気もするので、RAW対応するとしたら結局は調整されたRAWをステッチして出力はTiffでするということになるのでしょうか。RAWなんてメーカーや機種で形式が違うし、無駄なデータを内包しているという話もあるし、汎用RAWを決めようという業界の動きもあるみたいだし、とにかく未成熟な形式ではあるからRAW対応が難しいであろうことは何となくわかります。
 一方で、CCDやCMOSなど、センサーのダイナミックレンジ性能が良くなってRAW形式も成熟してくれば、トビツブレなど明暗調整だけのためにHDR処理する必要がなくなるわけで、これはこれで期待大ですし、その方向が望ましいような気もします。あるいは、どこかで読んだことですが、ダイナミックレンジ優先撮影のようなこと、つまり撮影段階でレンジ巾6段〜8段分の撮影ができるようになるとか。
 そんなわけでStitcherのHDR対応について知ったときは、そんなことする暇があるならほかにもっと改善が必要な部分がたくさんあるだろう、っていうのが実感でした。


 さて、StitcherのHDR対応について書く前に、QTVRを作る手順において、どの段階でHDR合成を取り入れるか、についてちょっと書いておきます。これまでは、次のように大きく二つの選択肢がありました。

1.異なる露出の画像ごとにステッチしてステッチ後にHDR→トーンマッピングする
2.ステッチ前に各画像ごとにHDR→トーンマッピングしてそれをステッチする


 以前に「VR作家のHDR講座」というのを書いたときは1の方法、具体的には3種類の露出違いのステッチ画像を作ってそれをHDR→トーンマッピングしていましたが、最近はすっかり2.の方法でHDR合成をしていました。これはPhotomatixがRAW画像からトーンマッピングまでバッチ処理できるようになったので手間が簡単であることと、3種類の露出違い(上下2段計4段3枚)程度ではHDR効果が薄く、HDRの効果を大きく引き出したければそれ以上の素材を撮影しないといけない、つまりステッチ作業がその分増えて手間がかかりすぎるという理由もあります。上述のような3枚合成程度ではHDRのアドバンテージはそれほどでもなくて、素材や撮影条件(明暗の差がそれほど大きくない)が適当であればRAWから欲しい絵を引き出すこともある程度可能だと感じているという背景もあります。
 StitcherがHDRデータのステッチを可能にしたことで、手順が楽になるというメリットはじつはありません。手順のことだけならステッチ前の各画像をPhotomatixでRAW→トーンマッピングまでバッチ処理してしまう方がはるかに簡単で早いので。だからこのHDR対応のメリットは、ステッチ後に全体の画像を確認しながらトーンマッピングの設定が出来るということだと思われます。というわけで3番目の選択肢。

3.各画像ごとにHDR化してそれをステッチ、HDR形式でspherical出力→トーンマッピング。

 
 この場合、個別にトーンマッピングされたものと、全体でトーンマッピングされたもので、差があるかどうかが大きな問題であり、興味のある部分なわけですが、実際にやってみると、どうも違うもののようだということがわかりました。といいますか、StitcherのHDRステッチされたspherical画像は一部壊れてしまい使い物になりませんでした(苦笑) これがソフトの根本的な不具合なのか、こちらの設定や使用環境によるものなのかは今のところわからないので、簡単にダメとも言い切れないのですが・・・困ったものです。

 というわけで、今回公開するVRのHDR処理はステッチ前にPhotomatixでHDR→トーンマッピングしたものをもとにステッチしています。せっかくアップグレードしたのに・・・残念!

 撮影場所は先日、用事があって久しぶりに行ってきた茅野市民館。マルチホールの後壁とロビーの扉を全解放した状態を撮影してきました。暗いホール内から明るいロビーを見たり、あるいは明るいロビーや中庭からホール内の暗い方を見ると、HDRの効果がわかっていただけると思います。


1.茅野市民館マルチホールの平土間をQTVRで見る
2.茅野市民館ロビーをQTVRで見る
3.茅野市民館の中庭をQTVRで見る

[撮影データ]
Nikon D80 10.5mmFishEye
-15°で6枚、天1枚 計7枚×6=42枚撮影

1: F8, 4″〜1/250   2段step計6枚
2: F8, 1″〜1/750   2段step計6枚
3: F8, 1/6〜1/1500 2段step計5枚

 オートブラケットを2回することで各アングル6枚撮影しています。
ダイヤルをいじることになるのでカメラが動く可能性を否定できないのですが、
一度のオートブラケットに制限があるので仕方がありません。


[補足-1]

HDRについての形容詞で「絵画調」というのがあってぼくも嫌いではないのですが、今のところは明暗の制御を主目的として考えているので、いわゆるHDR特有の絵画調な絵作りはしておりません。コンクリートや木、石、など天然素材の材質感をHDRで強調できたらいいなあ、という希望はあるのですが、どうも、なかなか・・・

[補足-2]

Zoom、Pan、Auto Alighenなどがショートカットキーとマウス操作の組合せになっててメニューからプルダウンする必要がなくなって、ナビゲーションが若干便利になりました。

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