Virtual Architecture | shikano yasushi atelier

QTVR制作者のためのHDR講座

講座と書くとなにやらおおげさですが、いつもお世話になっているVR関連の掲示板で、HDRを始めようとしている人も出てきたので、これまで試したことをまとめようと思った次第です。
VR制作のための撮影では、360度撮影する必要があるので、外部であれば太陽、インテリアでも照明などの逆光をさけられないので、ハイライトの白トビ、シャドウ部のツブレを改善したいと思っている人は多いと思います。そのための方法としては、次のような方法が考えられます。

(1)ハイライト/シャドウ補正を使う

ぼくは、photoshopのハイライト/シャドウ補正、nikon captureのD-Lightingを使っていて、これは手っ取り早い補正ではありますが限界も感じられます。

(2)トビツブレ部分を合成する

photoshopで露出の異なる画像をマスキングして合成する方法ですが、手間なのでぼくはやったことがありません。(たとえばこんな-方法です)

(3)HDR対応VR制作ソフトを使う

ぼくが知る限りでは、AutoPanoしかないのですが、何度かトライしつつも上手く使えず挫折しています。ただ、チュートリアルをやるとわかるのですが、このソフトは隣り合う露出の違う画像を調整して貼り合わせるので、CS2やPhotomatixのように画像丸ごと合成するとのは、ちょっと考え方が違うようです。このソフトは自動処理ができるので、絞り優先AEで撮った画像を丸ごと取り込んだら、あとはクリック一発でVRステッチ終了・・なんてことができそうなので、期待大ではあるものの前述のように今は挫折したままです。

(4)HDR合成

あらかじめVR用にステッチされた露出の異なる数種類の画像を、PhotoshopCS2やPhotomatixで合成しVR化する方法。白トビ黒ツブレの補正ができ、モノの材質感や光の具合など、表現の巾が広がります。使い方によっては絵画のような特殊な表現も可能になります。(例えばこんな感じ)

◆◆◆

QTVRを作るには使用ソフトによりますが、魚眼の場合、3枚から8枚の画像を貼り合わせます。ぼくの場合、nikon10.5fisheyeで8枚撮ってnikon captureで魚眼画像をノーマルにコンバートしてそれをsticherというソフトでVR化します。この方法はfrom parisというサイトで教わった方法です。ぼくは持っていないのですが、sigma8mmを使用すれば、fish4cubeというソフトで3枚か4枚、PTMacなら6枚程度の画像でもVRを作ることができます。魚眼ではなく広角レンズを使用した画像でVR化する方法もあって、魚眼の歪曲補正をしない分、高解像度な表現も可能になるのですが、撮影角度を正確に変えながら30枚〜50枚とたくさんの枚数の撮影が必要なので、ぼくはまだ試したことがありません。(たとえばこんなもの) QTVRに関するTIPSなどは、ここで取り上げるよりも、すでにたくさんの方が書いていますので、そちらをご覧ください。上記の掲示板からリンクを辿れば、いろんな情報が入手できるはずです。
さて、
VR制作でさえ枚数があって手間がかかるのに、そこにHDR合成の手順を増やすわけですから、効果を期待しながらも、なるべくその手間、すなわち撮影や合成の枚数はなるべく少なくしたいという気持ちもあります。その反面、枚数が多い→情報量が多い→表現の巾が広がる、という期待もあります。せっかく手間をかけてつくっても単に補正したものと比べて質の高いものができるとは限らないので、制作者は、その意図や撮影の状況に応じて、かける手間を決める必要があるわけです。

いったい何枚撮って、何枚で合成すればいいのか?


今回のサンプルは、手間とその効果の関係を確認するために作成しました。サンプルなので、三脚の消去、ステッチの荒い部分の修正など、通常おこなうような作業は省略しています。また、ノイズなどを確認できるようにズーミングによるクローズアップの範囲もいつもよりクローズアップできるようにしています。

[使用機材]
nikon D50、10.5fisheye

[撮影方法]
-2,±0,+2、オートブラケットでRAW撮影。

[合成のための素材準備]

撮影したRAWデータをnikon captureで魚眼歪曲補正をバッチ処理します(jpeg)。その際、-2→-4、+2→+4、さらに±0の素材から+2、-2の露出補正したものも作ります。これは実際に撮影したデータと現像で補正したデータを比較するためです。この二つはモニタ上でみると、現像で補正したものにはノイズが見られるなど、同じものではないことが確認されています。蛇足ですが、D50はオートプラケット(最大2段)で3枚しか撮れないという事情があります。もちろんダイヤルを回せばいいわけですが、カメラの角度を変えながら、たとえばVR1セット8枚×5段階=40枚撮るのは、間違いを起こす可能性があって、あまり現実的な方法とはおもえません。D200やD2Xであれば話は別なのですが・・

[VR制作]

±0の素材を元に、stichrでequirectangleイメージ(6000×3000)を作ります。露出違いの他のイメージは、ステッチの状態を同じにするために、このファイルをもとに作ります。具体的にはファイルの名前を同じにしてsticherのファイルオープン時に露出違いの別のファイルを読み込むようにします。あとは同じ設定でequirectangleイメージを出力するだけです。

[HDR合成]

前述したequirectangleイメージ(6000×3000)を元にPhotomatixでHDR合成をして、各種パラメータを設定の上、トーンマッピング(jpeg出力)します。今回のパラメータは下記の通り。


strength:80
luminosity:0
Color Saturation:50
White Clip:0.25
Black Clip:0.00
Smoothing:High
Microcontrast:High

[VR化]

前述したequirectangleイメージをCubicConverterでVR化します。なるべく2Mbを超えないように、jpeg圧縮を35で設定しました。

以下QTVRサンプル

[1] ±0を元にハイライト/シャドウ補正をしたもの
[2A] ±0を元に補正現像でつくった+2,-2の2枚を元にしたもの

[2R] +2,-2の2枚をもとにしたもの

[2A+R] ±0と、±0を元に補正現像でつくった+2,-2の3枚を元にしたもの

[3R] ±0,+2,-2の3枚を元にしたもの

[3R+2A] ±0,+2,-2の3枚に補正現像でつくった+4,-4の2枚を加えた5枚を元にしたもの


今回のサンプルでは、補正現像でつくった+2,-2の2枚を元にしたものでも、シャドウ部の描画においてノイズが見られるものの、コンクリートの質感表現を見ても、ハイライト、シャドウ部の光の表現においても、[1]と比べると効果を確認できます。適正露出の素材を使わずに効果を確認できたので、かなり驚きですが。
[2A]と[2R]を比較すると補正でつくった[2A]にはシャドウ部にノイズが見られるので、同じ枚数なら補正でなく実際に撮影した素材の方が質が高くなりそうです。
[2R]と[3R]は微妙な違いが確認できるものの大差がないという印象です。両方とも-2〜+2でレンジが同じだからでしょうか。
[3R]と[3R+2A]の比較も微妙な違いが確認できるものの大差がない印象で、部分的には[3R+2A]の方がノイジーにも見えるので、補正画像を使って合成枚数を増やすのはあまり意味がないかもしれません。

人物や車など動くものがある場合、VRステッチでその部分に「お化け」が現れますが、(丁寧に仕上げたければお化けは消しますが)、ブラケット撮影素材をhdr合成すると、「お化け」が倍増してしまうので、補正素材だけで意図が達成できるにこしたことはありません。
また人の顔をまだHDR合成したことがないので、確認する必要もあります。怪しい顔が描画されそうで、あまり向いていないと思いますが。(笑)
森の中、夕日の海、など、もともとダイナミックレンジの大きい撮影条件では、また違う結果が得られるかもしれません。
今回のサンプルは2段違いの素材ですが、この差を検討する必要もあると思われます。
また、アンダーとオーバーの2種類の素材を合成するソフトもあるようです。

などなど、補足テストが必要なこともありますが、まずはここまで。

 [追記]

上記[2A]のように、アンダーとオーバーだけで適正露出のデータなしでも、そこそこ描画できるということなら、ということで、補正でつくった+4と-4の2枚をもとに、さらに、それに±0を加えた3枚でも作ってみました。さすがに+4-4の2枚だけではpreview時に暗すぎたので、luminosityを+4にしました。それでも全体的に霞んだ仕上がりになっています。夕日の、すこしぼやけた感じが表現されていると言えないこともないので、おもしろいのですが、まあ特殊解ですね。ただ、これに±0を加えて合成すると他と比べても遜色のない結果になっていると思います。ただし、+2〜-2で作ったものに比べてレンジが大きいことが差になって表現されたかと言うと、違いがあるものの、大差ないという感じです。上下4段ずらしのブラケット撮影なんてできるカメラはきっとないと思うので、今回のサンプルに限って言えば、[2R]や[3R]で十分ということでしょうか。
・補正でつくった-4,+4の2枚で作ったもの

・補正でつくった-4,+4の2枚に±0を加えた3枚でつくったもの





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