Virtual Architecture | shikano yasushi atelier

高解像度パノラマを考える



パノラマのようなステッチ(貼り合わせ)写真はパノラマにするということとは別に高解像度になるという可能性も持っています。
少ない枚数よりもたくさん分割撮影した方が高解像度になるという理屈ですが、通信速度やPCの処理能力の限界で、これまで撮影、作成できてもウエブではそのまま表示できなかった高解像度パノラマも、マルチレイヤ、マルチレゾリューションという手法を使うことで軽快に表示できるようになるようです。すでにzoomifyで超高解像度写真は実現されていましたが、いわゆる全周360度パノラマVRでそうした写真を見たのは初めてです。

「高解像度QTVRパノラマ写真」のhagitanさんが紹介してくれたkrpanoのサンプルはあぜんとするほど超高解像度の360度パノラマでした。(マシンスペックによっては動作が重いので要注意)

そんなにクローズアップしてまで見せる意味があるのか、あるいは見せるべきかどうかという問題(たとえばプライバシー)もはらんでいるので、テーマによっては注意が必要だと思いますが、これほどの高解像度を見せられるとそろそろ検討を始めようかという気にもなります。
現在のぼくの使用機材、NikonD300+10.5mmの組合せの最大出力は約10000×5000pixで、これをウエブ用に約6000×3000程度までサイズダウンしています。これをサイズダウンせず、ウエブ上のディテールの画質が向上すればそれだけでもマルチレゾリューションを導入するのですが、そんなに甘いもんじゃなくて、サイズダウンしてもしなくてもそれほど大差ない、ということがわかっています。ですから次のステップにあがりたければ、使用レンズを変え撮影枚数を増やし解像度を上げる必要があります。(もしくはD3xのようなフルサイズ高画素カメラに変える?とか、コンデジ+Gigapanにするとか)

パノラマで分割撮影枚数を増やすということは、魚眼ではなく広角、標準、望遠と、焦点距離が長いレンズを使うことを意味します。焦点距離が長いほどピントが合う範囲(被写界深度)が狭くなるので、これをどう解決するかがポイントになります。現時点でよく見られる超高解像度のパノラマが遠景を撮影したものであることは、おそらくこの被写界深度のせいもあると思われます。たとえばkrpanoのサンプルでもYosemite Valleyは2gigapixelという超高解像度ですが足下がややボケているように見えます。一方、教会の内観パノラマは0.5gigapixですが、すぐ近くにあるベンチがきちんと表現されています。前者が望遠系、後者は広角系のレンズで撮影されたのではないでしょうか。このことは撮影される被写体、空間の大きさに対して最適な焦点距離のレンズはどれか(あるいは総画素数はどの程度か)、ということを考えないといけないということを意味しています。たとえば極端な例ですが、四畳半のような小さな部屋を望遠レンズで撮影しようとしてもピントが合わないか、合っても部分的にしか合わないことが容易に予想できます。krpanoのサンプルに車の内観がありますが、これはコンデジ(Fuji finepix F10)で撮影されていて12000×6000ですから、このくらいの小空間になると手が届きそうな画素数でディテールも十分表現されているように見えます。(至近距離にあるヘッドレストはさすがに近すぎるせいかボケていますが)

その一方で、
被写界深度と折り合いをつけるという方法ではなく、根本的に解決する可能性があるのが
焦点合成だと思います。
以前からすごく気になっていたのですが、HDRだけでも今は大変なのでなかなか試したい気分にすらなりませんでした。ですが、そろそろかな、という気もしています。実は先日のQTVR OFFLINEというパノラマ関連の懇親会の席、夜景パノラマで有名な
PECさんksmtさんとの間で話題になりました。PECさんはすでにやっているようでしたが、こちらはためしてすらいないので詳しい意見交換にならなかったのがすごく残念でした。被写体にピンぼけの写真があったらどうなるんだ? しゃきっとしちゃうのか? とksmtさんには大笑いさせていただきましたが(笑) まあ、それはともかく焦点合成を前提に考えれば、たとえば最短撮影距離が30cm以下で50mm以上のマクロレンズがあれば、小空間高解像度パノラマが可能になるかもしれません。そうなるとフォーカスブラケット機能が搭載されたカメラが欲しくなり・・・んーむ、これはまた新種の泥沼になりそうですが・・・

実際問題として、ぼくがパノラマで常用しているレンズ、Nikon10.5mmの対角魚眼の次は、Tokina AT-X116 PRO DXなのですが、
被写界深度を計算してくれるサイトがあったので、これでピントが合う範囲を見てみました。
絞り過ぎによる回折がどこで生じるか未確認なので、仮にF11で撮影するとした場合、広角端11mm(16.8mm)では457mm〜∞、望遠端16(24.4mm)で878mm〜∞、となります。つまり広角端なら約50cm以下の至近距離にあるもの、望遠端の場合、約90cm近辺から近いものがボケることになります。1m以内に物があることはよくあるので、もう、この時点でピンボケとの闘い?が始まることになります。
ちなみに
F11の場合、35mm換算で、28mmのとき約1m以下がボケ、35mmのとき約1.5m以下がボケ、50mmのとき約2.3m以下はボケることになるようです。カメラはおよそ床から1.5m程度(低いときは1m程度)で撮影しているので、50mmでは床や地面がピンぼけするということになります。以上のことは無限遠まで合わせようとした場合のことなのでその必要がなければかなり楽になりますし、実際にテストをしてみないことには何ともいえませんが、実質24mmでも近くにあるもののピンボケの心配をする必要がありそうです。実際ファインダー見ながらピントを回すとその様子がわかりますし。CubicVRで遠くがいくら高解像度でも床や地面がボケていたら台無しですから、落としどころ、限界設定をどこにおくか、テストを十分にする必要がありそうです。Tokina 116の場合、11mmならほぼパンフォーカスでいけそうですが、16(24mm)の場合、1m以下は犠牲にする、あるいはピントを手前にして遠くの様子を確認する、というのが最初の確認事項のようです。その上で、どうしてもって時は近距離側と遠距離側で撮影して焦点合成を検討する、といったとこでしょうか。ちなみにコンデジはピントが合う範囲が広いという点が有利ですが、たとえば実質28mmでコンデジとDSLRを比較したらDSLRの画質にかなわないでしょうから(最近のは性能が上がってそうでもないかもしれませんが)、コンデジの場合はもっと望遠寄りで撮影しないと比較にならないかもしれません。その場合、結局は近距離の被写体にピントが合うか、という問題に直面しそうです。

さて、どうなることやら・・・

写真はニコンの昔のレンズ。絞りに対してピントの合う範囲が色違いの線で表現されていました。


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