Virtual Architecture | shikano yasushi atelier

黒い箱の空間


 前回紹介したホールに付属するスタジオのQTVRを公開します。
ホール施設にはロビーや客席空間のような一般的に入れる部分以外に、楽屋、リハーサル室、稽古場、練習室、道具庫、機器庫など、普通は見ることのない施設がたくさんあります。実は施設全体で見るとロビーや客席というのはごく一部分でしかなくて、こうした裏方機能の方が全体から見ると大きい割合を占めているものなのです。
 このスタジオは床が合板の素地で出来ていて、道具や美術を床に釘で固定で出来るように考えられていることから、リハーサルや小規模の公演などにも対応できそうなしつらえとなっています。壁、天井は演出や稽古を妨げないように黒く塗られ、2階レベルにはギャラリー、天井にはグリッドを設けて、照明などを仕込むことができます。大ホールがオペラ仕様であることから、壁面に残響調整用にカーテンを吊ったりして、芝居の稽古とオケの練習と、両方想定した計画となっているようです。壁面と天井が市松模様になっていますが、これで吸音と反射を調整していて、また、画像ではちょっとわかりにくいのですが、壁は微妙な折れ壁となっていて音の拡散とフラッターエコーの防止を図っています。完全なワンルームではなく、一部に大きな中2階スペースを設けて、その下を楽屋的なスペースとしても利用できるようにもなっています。

某音楽大学のスタジオをQTVRで見る

 画像はHDR合成処理を施しています。最初はRAW現像時にハイライトシャドウの補正をしたのですが、ノイズがでて使い物にならず、結局HDR化しました。ノイズを除去するツールもあるので、色々試したのですが、ディテールやエッジ表現を保持したままノイズをうまく除去することができませんでした。スチール写真であればサイズを小さくすることでノイズについて、多少はなんとかなるのでしょうが、フルスクリーンVRとなると、なんとも逃げがきかなくて難しいです。
 黒いものを写真で表現することが難しいことのひとつの原因は、シャドウ部分が黒くつぶれてモノの形が見えなくなることだと思いますが、HDR合成処理をすることで、壁と天井の取り合い部分など、目には見えているのにカメラではとらえられないモノの輪郭を、かろうじてですが、描画しています。




 

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