Virtual Architecture | shikano yasushi atelier

パノラマで難しいこと

前回記事(学会イベント仕込篇)のVRはすべて三脚ではなく一脚(nikonD5000+sigma8mm、水平4枚)で撮影しており、ひとつを除いて全てHDR合成せずに作られています。人がたくさん動く状況での撮影だったので最初からそのつもりだったのですが、テントの中を撮ったものだけはハイライト側、コンクリートのゲートの表情を残しつつシャドウ側を持ち上げるには少し無理があったので、これだけはAEBで撮影していた1段巾明暗3種の画像をPhotmatixでexposure blending(一脚なのでauto align)を施し、動いてブレていた人は元画像を合成し、それらをステッチした後に仕上げにakvisでディテールを強調しています。tone mappingでなくexposure blendingなのは、その方が結果がよかったからですが、exposure blendingは元画像の調子が処理後もあまり変わらないので、あとで元画像から合成するなどの後処理がしやすいというメリットもあります。ふだんのHDR合成→tone mappingのためのパラメータは1段巾明暗9種類で最適化しているので、同じ設定で1段巾明暗3種程度では情報不足なのでしょう。

パラメータで結果が変わるので印象程度の話ですが、ハイライト、シャドウをしっかり表現したかったらtone mappingの方が良さそうだ、というのがぼくの判断ですが、このように動体ゴーストを処理するのが前提の場合はexposure blendingされた画像に元画像を合成する方が楽ではあります。ちなみに、photomatixの人や車などのmoving objecsの除去を試みるオプションやDynamic Photo HDRの動体をマスクする方法も、人が微妙に身動きしているような状態ではノイズが増えたりそもそもマスクのしようがなかったりするので不向きです。今のところ人が動きそうな状況下でパノラマ用にHDR合成するなら高速連写で人が居ない状況か、動きがほぼ止まっている状態を狙うしかないようです。このときはD5000(4fps)を使うと決めてしまったのですが、今考えるとD300(8fps)を高感度にしてでも高速シヤッターで連写する方が良かったかもしれません。

一方、前述のVR以外はすべてsingle RAWだけで作っていますが、よくハイライト側を割り切ってトバしてしまう人もいますが、あきらめが悪くしつこい性格とパノラマなんだから全部見えなくちゃいやだ、という頑固さのせいで、ハイライトをなるべく残しつつシャドウをぎりぎり持ち上げているので、全体的にちょっとノイジーになっています。(ノイズもいやなんですがね) ただ、カメラはD80をD5000にリプレイスして初めて本格的に使ったのですが、以前よりシャドウ側はだいぶ持ち上げ幅が大きくなったような気がしていて、これならD700やさらに高画素のD3xなら、このノイズももっと軽減できるのではないかと思ったりしています。夜の撮影もなかばヤケでiso1000で撮影したのですが、さすがに暗すぎてノイズ除去で調子が悪いのもありますが、意外と使えそうな感じです。噂の高画素化されたD700の後継機?が発売されたら値落ちしたD700か多少高感度性能が落ちても高画素もなにかと有利なので新しい方を選ぶか、思案のしどころです。

Stitcherは露光設定(明暗)の異なる画像も適当にブレンドしてステッチしてくれるので、なかには順光と逆光で設定の異なるものを使ってステッチしているものもあります。また、部分的にnikon NX2のコントロールポイント(ステッチの際のコントロールポイントではありません)を使ってステッチの前に部分的な調整もしています。全部同じ露光設定で撮影してステッチするのがパノラマの常識と言われてますが、必ずしもそうではなくて、個人的にはむしろ、隣り合う画像とのブレンド限界範囲内で最適設定を探りつつ個別に調整した上でそれをステッチしたほうが結果も予想しやすいし良いような気がしています。おかげでやたらと時間がかかるようにはなりましたが。

仕込篇につづく本番篇を現在作業中なんですが、その中でいろいろと失敗していて明らかにボツなんですが、ちょっともったいないものがあったので、ネタとして公開。

「劇空間を再考せよ」テントで打ち合わせ中


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